悲鳴窟

怪談その他

黒木あるじ監修『怪談四十九夜 鬼気』

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(2020年5月4日 初版第1刷)

目次

2 まえがき(黒木あるじ)

我妻俊樹
8 そらのおはか
12 トルコ石
18 赤い幽霊
22 遅刻
26 夜の崖

葛西俊和
30 宿直
36 重さ
42 筆箱
49 つゆだけでも
52 海

田辺青蛙
56 ごて地蔵
59 幽霊画の話
63 映画村
65 通り抜け
67 八幡のスーパーで
75 電話帳

丸山政也
77 老人の背なか
79 ふたりが聞いた声
81 エリカ
93 後悔

冨士玉女
98 いいから
100 毛髪
102 毛髪その2
107 ループ
113 帰る人

つくね乱蔵
117 コッカッ
121 見えなくなった
126 辞職の理由
131 部下を思う
136 封印

神薫
142 蛙波
144 桜、青空
147 中の人
148 兆髪
154 死髪

吉田悠軋
163 コーヒー
166 まだら猫
170 口げんか
176 身代わり地蔵
181 怒る上官

黒木あるじ
185 おんなのこ
190 おじいさん
193 そのおんな
196 そのおとこ

黒史郎
205 肩たたき
208 ぽい
210 ない
213 テンション
217 血痕

黒木あるじ監修の「怪談四十九夜」シリーズ第七巻。

「出棺」「荼毘」「埋骨」と葬送に関する語彙がタイトルになっていた本シリーズ、ここにきてちょっとしたイメージチェンジ(そうか?)。

筆者の大好きな我妻俊樹、つくね乱蔵の作が弱く感じた半面、その他の執筆陣に当たりが多かった。

特に葛西和俊、田辺青蛙、黒木あるじの収録作は軒並みよかった。

黒木は監修者側にまわると控えめになるイメージだったが、今回は切り口からして抜群におもしろい怪談を披露しており、他の執筆陣を食い殺す気満々。黒木パートだけでも、まずは一読をオススメしたい。

オススメ怪談3選

①「筆箱」(葛西俊和)
噛み跡のついた鉛筆とかわいた唾液のにおい。とにかく生理的嫌悪感を催す怪談。葛西のパートは全部よかったが、怪異表出のインパクトが最も強かったこの話を選んだ。

②「幽霊画の話」(田辺青蛙
落語のような話。霊感がどうこうというのは信じていないのだが、怪異を怪異として認知するには、なにがしかの能力が必要だとも思っていて、個人的にはそれが欠如している人の話のほうがおもしろいことが多い。本話はその好例で、語りのセンスもすばらしいの一言。

③「おんなのこ」「おじいさん」「そのおんな」「そのおとこ」(黒木あるじ)
過去にとある一家を見舞った怪異を、娘⇒妻⇒近所の住人⇒夫の語りによって再構成していく連作。ミステリ的な構成の巧みさもさることながら、幽霊に対する固定観念脱構築するポストモダン怪談にもなっているのがすごい。ベテランの面目躍如。