悲鳴窟

怪談その他

【実話怪談】トルコの飴

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「贋物二題」のうち「裸踊り」の話を提供してくださった美和さんがトルコ人の友人の家に遊びに行った際、その彼が突如、
「シャブでもやるかあ」
と言い出したのでギョッとした。

鼻歌まじりに友人が取り出したのは、クッキーかなにかの缶で、中には薄茶に透き通った結晶のごときものが入っている。どうも「シャブ」ではないようだ。
友人は彼女のあわてた様子を見て大笑いし、
「これはトルコの飴なんだよ」
と言った。

成程ターキッシュ・ジョークだったのね、と安堵した美和さんがその飴を舐めてみれば、とにかく口に合わない味で、木の肌を煮詰めたようなエグみに辟易したが、三十分後、猛烈な睡魔におそわれた彼女が床に転がると、次の瞬間には寝ているじぶんの様子を部屋の上のほうから眺めていた。二十二年間生きてきて、はじめての幽体離脱体験であった。

「だからトルコの飴には幽体離脱の効果があるんです」
とは美和さんの主張である。

 

※美和さんが舐めた「トルコの飴」については、おそらくは松脂を原材料としたのど飴ではないかとのことでした。違法薬物のたぐいでは決してないことを付記します。また幽体離脱の効果には個人差があると思われますのでご了承ください。