悲鳴窟

怪談その他

【実話怪談】こっくりさんの歌

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三芳さんが中学生の頃、クラスの隠キャグループ四人組で放課後にこっくりさんをやろうという話になった。三好さんも四人のうちのひとりである。
が、いざ放課後になってみると、いったいだれが漏らしたのか「隠キャたちがこっくりさんをするらしい」という情報がクラス中に知れ渡っており、半分以上の同級生が教室に居残っていた。
もっともそこに「こっくりさんなんて根暗な真似をしている隠キャどもをからかってやろう」という特別な意図はなかったようで、みな純粋にこっくりさんに興味があるだけらしかった。
三芳さんはドキドキした。普段、教室の片隅でカードゲームばかりしていた彼が、こんなふうに注目される機会はなかったからだ。
五十音表に「はい/いいえ」、鳥居のマークを書いた紙を配置し、作法通り、四人は十円玉に手を置いた。
ではいざ尋常に……というその瞬間、
こっくりさんの歌はうたわないの?」
という声が窓の向こうから聞こえてきたので、そこにいた全員が弾かれるようにして教室を飛び出したのだという。三芳さんたちの教室は三階だった。

それから二、三年後のこと、その時の四人組でカラオケに行った際、
「あの時のあれ、めっちゃ怖かったよね」
という話になった。
するとMという友人がいきなりマイクを握り、聴いたことのない歌をうたいはじめたのだという。それは童謡「ほたるこい」や「鳩ぽっぽ」を髣髴させるメロディーの歌だった。
最初、三芳さんは、変な替え歌をうたっているのか? と思っていたが、聴いているうちに悪寒がしてきて、吐き気までおぼえてきたそうだ。
「おまえ、なんだその歌?」
三芳さんが訊くと、Mは訝しげな表情で、
「なにって、あの時みんなで作った歌だろ?」
と言った。三芳さんにもほかのふたりにもそんな記憶はぜんぜんなかった。

それから更に二、三年後、大学生になった三芳さんが某動画共有サイトで心霊系の動画を観ていたら、おすすめ動画欄に「【閲覧注意】こっくりさんの歌【歌ってみた】」というタイトルの動画が出てきた。
厭な予感をおぼえつつサムネイルをクリックすると、真ッ暗な部屋のなかでMによく似た男が、
「こっ、こっ、こっくりさん……」
というあの時の歌をうたっている動画が流れたのですぐに視聴をやめてしまった。

後日、三芳さんがM以外のふたりにその動画のURLを送ったところ、なぜかほぼ同時にブロックされ、動画自体もそれからしばらくして削除されていたということだ。