悲鳴窟

怪談その他

【実話怪談】関係

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今年で不惑をむかえる芳樹さんは、郵便ポストの投函口から猫の頭部らしきものがにょっきりと「生えて」いるのを、これまでの人生で計五回見たことがある。
アッ! と思った時にはもう消えている。錯視というには、あまりにはっきり見えるのだとか。

そんな話を以前聞いて、おもしろいなと思った。怪談会やツイキャスでも何度か披露したことがあり、文章を起こすにあたって、再度、芳樹さんに連絡をとった。

「ああ、あの話ね。言いそびれてたけど、猫関係で変な話は他にもあるんですよ」

郵便ポストの猫と関係があるのかはわからないが、芳樹さんは猫になつかれるということがない。野良でも家猫でも、彼が近づくと毛を逆立てて威嚇する。

またこんなこともあった。
ひさびさに電話をしてきた友人から、怒り心頭といった口調で、

「おまえ、猫を殺してるそうだな」

いきなりそう詰められた。
なんでもすこし前に手酷い別れ方をした元交際相手が、周囲に芳樹さんの悪口(というか端的に誹謗中傷だが)をあることないこと喋り散らしていたらしく、その中に「あいつは簀巻きにした猫を川に流してストレス発散するような男だ」という文言があったのである。
猫好きの友人はそれを真に受けたのであって、もちろん芳樹さんは猫を殺してなどいない。

どうしておれにはこうも猫関係で妙なことばかり起きるのだろう。
そんなふうに思っていた矢先、芳樹さんは脇見運転の車にぶつけられて左足を骨折する大怪我を負った。
その事故現場となった場所は、「猫」の一字が入った坂だったそうだ。

ここまでくると猫の祟りとか呪いといった考えも脳裏をよぎるのだが、それにしてもまったく心当たりがないから困っているのだという。