十年前、恋人からメールで唐突に別れを告げられた知念さんがあわてて彼女のマンションに駆けつけると、部屋はすでにもぬけの殻だった。
しかし合鍵で入った部屋の壁という壁には、おそらくは同一のお地蔵さまをさまざまなアングルで撮ったとおぼしき写真が無数に貼られていて、知念さんは背筋が冷える思いをした。
その彼女とは以来、一度も会えていないが、なぜか毎年、知念さんの誕生日にだけはメールが届く。
おざなりな「誕生日おめでとう」のメッセージとともに、あのお地蔵さまの写真が一枚、かならず添付されているそうだ。
知念さんが言うには、そのお地蔵さまの顔が、年々、記憶の中の彼女に似てきているのだそうで、さすがにそろそろブロックしようとは思っているものの、なかなか《気持ちの整理がつかない》ということなのである。