悲鳴窟

怪談その他

【実話怪談】忠告──その子供

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前浦さんが新宿の伊勢丹前で信号待ちをしていたら背後から肩を叩かれた。振り向くとそこには東南アジア系とおぼしき見知らぬ女が立っていた。女は彼のすぐ横のなにもない空間を指差しながら、
「あなた、その子供どうしたか? よくないね。捨てなさい」
それだけ言って踵を返し、すたすたと駅方面に歩いて行ってしまった。
なんだいまの? 前浦さんは立ち去っていく女の後ろ姿を呆然と見送った。
それからというもの、前浦さんは街中で見知らぬ人から、彼の目には見えない子供についての忠告を受けるようになったのだという。
「どういうわけか女性から、それも決まって東南アジア系の人に声をかけられるんですよ」
つい先日は電車の中で恰幅のよいご婦人から、
「その子供、包丁持ってるよ」
そんなことを言われたそうだ。
現在、前浦さんは真剣にお祓いを検討している。