悲鳴窟

怪談その他

2021-01-01から1年間の記事一覧

【実話怪談】何故猫

ショップ店員の優里亜さんが小学六年生の頃、日帰りのバス旅行で日光へ行き、華厳の滝を写真に撮ろうとしたところ、担任の先生がニタニタと笑いながら近づいてきて、「知ってるか? ここは自殺の名所なんだぞ。こんなところで写真を撮ると、自殺者の霊が写る…

【実話怪談】墓地横のアパート

三上くんの昔の友人に多田という趣味のわるい男がいて、そいつは道端の地蔵を蹴倒したりお稲荷さんに小便をひっかけたり、幽霊が出るとうわさのトンネルにわざわざ出かけて大便を垂れてきたりするのだそうで、その度を越した狂態に多くの友人はドン引きして…

【実話怪談】呪殺先生

とにかくおかしな教師だったのだそうだ。 「いまでも思い出すと気分が落ち込みますね。同窓会なんかでも、その話題はタブーになってますよ」 わたしと同年輩の鷲尾さんが中学三年生の時の担任は、生徒からの評判がおよそ最悪であった。当時四十そこそこだっ…

【実話怪談】団子

ある日曜の昼頃、当時大学生だった岡本さんがアパートでごろごろしていると、玄関の扉を遠慮がちにノックする音が聞こえたのだという。 ドアを開けるとそこには知らない女が立っていた。女は「近くまで寄ったから」とか「お団子買ってきたから」というような…

【実話怪談】ポチョン

インドネシアから来た留学生のアニサさんに、「インドネシアのお化けの話、なにかありますか?」と訊いてみたところ、「ポチョンが有名ですね」と即答された。 寡聞にしてわたしはポチョンなるお化けがどんなものかを知らない。それで職権を濫用してしつこく…

【実話怪談】気をつけなされ

ある晩、津田さんが日課のジョギングをしていると、向こうから茂木さんが歩いてきたので緊張した。茂木さんはこのあたりでは有名な変なおじさんで、蓬髪に無精髭、真冬でも甚平に雪駄履きで、日がな一日、わけのわからない譫言を呟きながら近所を徘徊してい…

【実話怪談】厭な女

安曇さんは今年で四十二歳になる都内在住の女性である。四年前に結婚した彼女は、二年間の不妊治療を経て、待望の一女をもうけた。夫は家事にも子育てにも協力的な、おだやかな人である。娘も元気に育ち、義父母との関係も良好、職場復帰も実にスムーズだっ…

【実話怪談】ビルが建ってる

ベトナム人留学生のキエウさんから聞いた話。キエウさんは日本に来る一年ほど前から奇妙な夢を見るようになったのだという。 気づくと彼女は、見たこともないビル街を歩いている。それが夢だということは、キエウさんにはすぐわかる。なぜなら空に浮かぶ月が…

【実話怪談】おれ憑き

「きみの背中に『おれがついてる』んだ。気味がわるいからどうにかしてくれないか」唐突にそんなことを言われて、酒見さんは動揺した。相手は仕事上の同僚にすぎない葛西という男で、その時はたまたま会社の喫煙所で一緒になったのである。「言ってる意味が…

【実話怪談】マサトが来てる

その日、翔子さんが帰宅したのは夜八時頃であった。風邪でも引いたのか、頭が重く食欲もない。「今日は夕飯いらない。体調わるい」リビングにいた母に声をかけ、自室に戻る。部屋着に着替えている最中、全身に悪寒が走った。これはヤバいかも。ベッドに倒れ…

【実話怪談】ヤニ茶漬け

山形県在住の磯峯さんの体験談である。 磯峯さんは自他共に認める山歩きの達人だ。その日も早朝から山菜取りに出かけたのだが、気分が落ち着かない。胸がソワソワして、通り慣れているはずの道を間違えてしまった。つねにはあり得ないことである。幸いすぐ気…

【実話怪談】他人心中

ある日、眞子さんは恋人の恭二さんからおかしな相談を受けた。 「夜中に目覚めると、うちの玄関口に男が座ってるんだ。最初は俯き加減なのがちょっとずつ顔を起こして、このままいくと目が合う、顔を見てしまう、それだけは絶対にダメだ、そう思って目を瞑る…

【実話怪談】ヨシコのことはもう忘れて

若松さんが東北地方の某県に出張した時の話である。 その日の仕事を終えた彼は、軽く酒でも飲みたい気分になり、ホテル近くの繁華街をぶらぶらと流していた。すると道の向こうから、手を振って近づいてくる者がいる。スーツ姿の若い男で、最初、若松さんは客…

【実話怪談】山田くん家の幽霊

久野さんが小学生の頃、近所に評判の幽霊屋敷があった。 一家心中があったとか一人暮らしの老人が暴漢に殺されたとかいろいろ噂は囁かれていたが、真偽のほどはわからない。 出るとされる幽霊についても、赤い服を着た女、和装の老女、おかっぱ頭の子供、と…

黒木あるじ監修『怪談四十九夜 鬼気』

(2020年5月4日 初版第1刷) 目次 2 まえがき(黒木あるじ) 我妻俊樹8 そらのおはか12 トルコ石18 赤い幽霊22 遅刻26 夜の崖 葛西俊和30 宿直36 重さ42 筆箱49 つゆだけでも52 海 田辺青蛙56 ごて地蔵59 幽霊画の話63 映画村65 通り抜け67 八幡のスーパーで…

正木信太郎、しのはら史絵、夜馬祐、若本衣織『趣魅怪談~特殊趣味人が遭遇した21の怪異』(彩図社)

(2021年7月21日 第1刷) 目次 2 はじめに 9 第一章 奇の怪異 10 【トレイルランニングの怪異】パアァァン!(しのはら史絵)16 【鉱物コレクターの怪異】石拾い(若本衣織)20 【ウミウシ撮影の怪異】奇妙な海の宝石(正木信太郎)30 【球体関節人形作りの怪…

朱雀門出『第六脳釘怪談』

(2021年7月6日 初版第1刷発行) 目次 9 一 十五の夜14 二 イタイ元カノ18 三 自分の部屋にいる女20 四 伊吹山でUFOを見た話23 五 捕まえたヤモリ27 六 宗教歌が聞こえる29 七 卒業式で流れた曲33 八 象が逃げました39 九 ヅラの下42 十 前世が見えるの44 十…

小田イ輔『怪談奇聞 祟リ喰イ』

(2018年4月5日 初版第1刷発行) 目次6 盆踊りにて10 立ち傘15 朝の異界22 事故と縁28 一人にしないで33 暫定因果39 続かぬ因果42 砂糖と小麦粉49 曼荼羅遺書59 南米の鹿66 廃屋の住人70 幻覚か幽霊77 食べられた記憶81 虫の知らせ、あるいは道連れ88 嘘から…

平山夢明監修『怪談五色 死相』

(2017年12月6日 初版第1刷発行) 目次 小田イ輔11 順番待ち?17 造成地の公園22 小料理屋にて30 血生臭い何か34 T君のこと40 加護47 後遺症 我妻俊樹57 花の匂い60 広場の集会64 先輩のボトル69 泥棒池74 六年間77 スカジャンの男84 テレビの話90 マネキン9…

加藤一編著『鬼怪談 現代実話異録』

(2021年4月5日 初版第1刷発行) 目次 3 巻頭言 鬼(加藤一)6 本望(つくね乱蔵)11 百鬼夜行を描く(音隣宗二)14 海を渡った般若面(松本エムザ)20 有能な鬼面(つくね乱蔵)25 鬼石(soo)28 キセキ(服部義史)45 踊る赤鬼(つくね乱蔵)51 受け継ぐ(…

郷内心瞳『拝み屋備忘録 怪談双子宿』

(2018年3月7日 初版第1刷発行) 目次 2 それは誰にも等しく訪れる8 好きなんですか11 女か犬か14 朝の客17 宅配便20 幽霊役22 ご一緒に24 猿声29 お地蔵さん30 ちょうだい!32 隕石34 空白時間38 エレベーター42 耳吸い47 突入前48 あったりなかったり52 完…

黒木あるじ監修『怪談四十九夜 怖気』

(2017年11月4日 初版第1刷発行) 目次(※我妻俊樹が吉澤有貴と表記される誤植あり) 2 まえがき(黒木あるじ) 小田イ輔9 お礼参り13 最後の望み17 返事23 最終電車にて28 祟り木 神薫32 幽霊の正体36 ペル41 ゲームの達人46 お邪魔しました47 四十九日 真…

小原猛『琉球奇譚 シマクサラシの夜』

(2018年7月6日 初版第1刷発行) 目次 2 前書き10 これじゃない13 麝香の香り15 童骨19 チーゴーゴー20 サチコ―24 スコール29 シマクサラシの夜41 壕の話48 日本兵とユンタク59 すいませんねえ62 ヒーゲーシ67 フェンスの向こう71 白い馬が跳ぶ74 すばるれお…

神沼三平太『実話怪談 怖気草』

(2018年3月7日 初版第1刷発行) 目次 3 まえがき6 水没8 コレクター16 おつげ21 利き腕29 掛け軸37 井戸46 鳥居53 双白60 芒原66 吊り部屋77 ダイビングスポット85 蛇塚95 十二単衣105 道114 七代118 ははのひ126 あなたのために129 オレオレ詐欺142 巾着袋…